妊婦には欠かせない葉酸

妊娠中の健康維持に決定的な重要性をもっているのが葉酸というB群のビタミンです。このビタミンの必要量は妊娠中は2倍にはね上がります。(

葉酸については、わが国ではRDA に当たる栄養所要量さえ定められていない現状ですが、このビタミンを不足させている妊婦の数は想像以上に多く、流産や胎児障害の原因にもなっています。

葉酸の欠乏症の1つは悪性貧血で、アメリカの調査では妊婦の2.5% から5% がその貧血をひき起こしています。

葉酸は体内でどういう役割りを担っているのかというと、ビタミン12 と組んで赤血球やDNAの産出を助けています。妊娠中に体重が増えるのは血液の増加も大きな理由になっているのですが、B12と葉酸がないと正常な赤血球がつくり出せないのです。異常に大きな赤血球ができるようになる一方、数は減少するという大赤血球性貧血、つまり悪性貧血を招いてしまうのです。それが深刻な事態であることはいうまでもなく、無事出産できても赤ちゃんの生後の発育と知能の発達に影響が及ぶことになります。

葉酸は特に妊婦に必要な女性のためのビタミン

DNAは細胞の核にある遺伝情報をもった分子です。その情報を伝達するのがRNAと呼ばれる分子で、それに基づいて組織がつくられていきます。胎児のDNAとRNAがスムーズかつ正常につくられていくことはきわめて重要ですが、この2つの分子の産出にも葉酸は不可欠なのです。

それは新しい生命体がつくり出されていくプロセスの根幹の部分なので、葉酸が欠乏していた場合には、もはや収拾のつかない事態が招来されると思ってよいでしょう。だから、妊娠中は普段の2倍の摂取量が勧告されているのですがそれは現実的に食事でとることのできる量なのでしょうか?

菜食主義者ならばまったく問題なくとることができるでしょう。菜食主義者でなくても野菜をよく食べている人は十分にとれる量なのですが、野菜の調理法によってはとれないでしょう。

葉酸というように、このビタミンが最初に単離されたのは粟野菜からで、緑色の葉野菜に多くふくまれています。とくに、ほうれん草、かぶの葉、芽キャベツ、アスパラガス、ブロッコリーは傑出した葉酸源で、たとえば加熱調理したアスパラガスやほうれん草を1カップ食べると、それで妊婦に対する1日当たりの摂取勧告量の4分の1がとれます。

他には、豆類、ナッツ類、さやいんげんやきぬさやなどのさやごと食べられるさや豆類、小麦全粒粉のパン、そしてレバーがよい葉酸源になります。

これとは対照的にビタミンB12源となるのは動物性の食品である。レバー、貝類、魚卵、魚類、卵、乳製品、肉類に多くふくまれています。だから、葉酸に比べるとはるかにとりやすいのです。ビタミンB12 は他の栄養素と異なり、肝臓に3年以上も貯蔵されうるために欠乏することはまれで、吸収率も低いのですが妊娠中は高まります。それだけ妊娠中はこのビタミンの必要量が増えるということです。

ビタミンB12・葉酸の働きと作用

ビタミンB12はまた熱に強く、加熱調理によって失われるのはわずかです。その点も対照的で、葉酸はきわめて熱に弱いのです。

煮る時間が長くなればなるほど多く失われることはもちろんですが、水の量も大きなファクターです。煮る湯の量が多いと湯に溶け出す葉酸の量も多くなるのです。だから、水なしで蒸すと損失はごくわずかですむし、油を使わずに妙めた場合にもあまり失われません。

おひたしにする場合は、沸騰を維持しながら面倒でも少しずつゆでるのがよいでしょう。湯が沸騰してさえいれば、ゆでる時間は2~3秒で十分なので、入れたらすぐに出すようにします。少しずつゆでたほうが結局は短時間ですみ、葉酸をはじめ野菜の栄養が最大限に守られるために、おいしいおひたしになるのです。

健康になるための食事の知識

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