人間の食事や労働と、糖質との関係性

中世ヨーロッパの庶民の食事

同じ食事のくりかえしで単調だった

さて、ここからは、人間の食事や労働と、糖質との関係をみていくことにしましょう。

中世ヨーロッパの庶民の食事について記されている歴史書を読むと、彼らの食事は毎日、同じ食事の繰り返しで単調だったことがわかります。

中世ヨーロッパの食事の基本は煮込みであった。(中略)大鍋が日夜火にかかっており、野菜や肉、獣脂がごつた煮に煮られ、消費された食材は次々と補給された。(中略)農民はわずかの塩漬けの豚肉や豚脂を加えるか、または野菜と豆に、古いパンを加えただけのごつた煮風スープを毎日飽きることなく食べた…

るいはこのような記述もありました。

中世から近世にかけては食糧供給が非常に不安定であつた。(中略)農村では、毎日の食べ物と祝祭時の食べ物との落差が大きく、収穫祭、結婚式、守護聖人の祝日、復活祭、クリスマスなどに桁外れのお祭り騒ぎをする一方、通常はせいぜいパンか野菜の煮汁だけで生きていた。19世紀までのヨーロッパの農民の大半は、肉をほとんど口にせず、パンのほかは鍋で煮た野菜とスープばかりでああった。

これらの本をはじめて読んだ当時は、なんて貧しいつまらない食生活だったのだろうと思ったのが正直なところです。来る日も来る日も野菜と豆のごつた煮、朝も昼も晩もパンと野菜の煮汁です。おまけに肉を食べる機会はほとんどなかったというのです。これでは、昔読んだソルジェニーツィンの『収容所群島』の食事と変わるところがないではありませんか。

それなのに「毎日飽きることなく食べた」のです。食の楽しみのない人生はみじめだな、毎日野菜のごつた煮しか食べられない人生は味気なくて嫌だな、この時代の庶民に生まれなくてよかったな、と本気で思ったものです。

ところが、糖質制限に体が慣れると、自分が以前ほど「食事に執着していない」ことに気がつくことができます。本格的に糖質制限を始めてから、朝は糖質の少ないシリアルと牛乳とチーズ、昼はお弁当のおかずだけ、夜は近所の居酒屋で野菜炒めと焼き魚、という食事を半年間ほどほぼ毎日食べていました。仕事が忙しかったので食べ物についてあれこれ悩むのが面倒だったということもあります。

もちろん、毎日同じ物を食べているのだから、食べる前から料理の内容も味付けも完全にわかっています。意外性は皆無で、単調といえば単調な食事です。

ところが、不思議にそれが苦痛でも不満でもないのです。空腹感を感じたから食事を食べているし、生きていくためには食べなければいけないのですが、それ以上でもそれ以下でもないのです。世の中には食べることが何より楽しみ、人生の喜び、という人もいますが、一方で、食べることを楽しみとしない人生も可能です。糖質制限に目覚めなければ、このような「食事に執着しない人生がある」なんて絶対に気がつかなかったことです。

美味なるものを追い求める生き方をする人を否定しようとは思いません。しかし、美味を追求していくと、そこには必ず、食材や調味料として糖質が待ち受けているのです。そして糖質摂取を続けていれば必ず肥満になり、その先には糖尿病が待っています。もちろん、美味なるものを食べて、糖尿病やアルツハイマーになるなら本望だ、という生き方もあると思いますが…。

糖質制限食による血糖値を下げる効果とダイエット効果

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