食事の改善でうつが治るとわかったきっかけ
ガン治療の中で発見
食事の改善でうつが治るとわかったきっかけ
ガン治療の中で発見
栄養療法
ハリウッド女優・マーゴツト・キダーを、うつ症状から完全に復活させた治療法、うつの原因を栄養素の不足、欠乏に求め、必要な栄養素を補っていく治療法が、「栄養療法」、正しくは、「分子整合栄養療法」(オーソモレキュラー療法)と呼ばれるものです。
その創始者であり、現在も第1人者として、カナダで多くの患者の治療に取り組んでいるのが、前述したエイプラム・ホッファー博士です。博士は精神疾患に対する栄養療法だけでなく、ガンに対する栄養療法でも知られています。
アメリカやカナダでは、ガン治療についてあるシステムが定着しています。治療を受けている患者は抑うつ症状をともないます。ガンの専門医はその対応のため、精神科医と手を携えて治療に当たるのです。精神科医のコンサルテーションによって、うつの診断やコントロールを行います。
ホッファー博士は精神科医として、ガン患者の精神疾患の診断や治療を受け持っていました。そして不思議なことに、ホッファー博士によってうつ病の治療を受けているガンの患者の多くが、生存日数がそのほかの患者と比較して著しく長期間になつていたのです。
博士はもともと生化学の分野で博士号を取得していて、身体にあらわれる症状を分子レベルで研究していたのです。つまり、分子で構成されている身体のなかの物質が、なんらかの変化をきたし、その反動によって症状があらわれる、と考えたのです。
とくに博士が興味を持ったのが、幻覚や幻聴を訴える精神疾患でした。当時から、精神疾患へのアプローチは、患者が訴える症状によって診断されていました。つまりうつ症状や不安や幻聴などの症状が診断の根拠にされており、脳内で起こっている生化学的な変化については、まったく考察されていなかったのです。このことは基本的に現代の精神科・心療内科の診断・治療と大きな差はありません。博士はこれに違和感を持ったのです。
精神疾患には、脳のなかの物質の変化がかかわっているはず。それが博士の仮説でした。その証明のために、さまざまなアプローチをおこなった博士は、栄養素であるナイアシン(ビタミンB3)を中心とした治療が、統合失調症に確かな成果を上げることを確認したのです。
ナイアシンの働きと作用 | ビタミンの効能・効果https://vitamin-guide.info/archives/66
しかし、当時の精神疾患についての考え方に真っ向から対立するホッファー博士の説が、医学界に受け入れられるはずもありません。博士は「異端者」のレッテルを貼られ、学会を追われてしまうのです。
もちろん、自説に揺るぎない確信を持っていた博士は、ガン患者に対しても栄養素を使う治療をおこないました。精神疾患への対応として行ったわけですが、それによってガンの進行も遅れることがわかり、その後、ガン治療にも栄養療法が積極的に取り入れられるようになった、という経緯があるのです。
さて、医学界には受け入れられなかったホッファー博士の発表でしたが、たった1人それに注目した人物がいました。ノーベル化学賞、ノーベル平和賞の2つを受賞した、ライナス・ポーリング博士です。
ポーリング博士は、病気の予防・治療効果を上げるためには、身体を分子のレベルから考える必要があることを主張し、現代医学にはその視点が欠如していることを指摘していました。しかし、病気の予防や治療のためには、ビタミンをはじめとする栄養素(分子矯正物質) を正しく使うことが必要だと訴えた博士にも、ホッファー博士と同様、猛反発の声、非難の嵐が集中したのです。
そんななかで、二人の交流は始まりました。ポーリング博士は、先にお話ししたナイアシンを多量に投与することによって、統合失調症が改善したという、ホッファー博士の発表内容を受け、「分子整合栄養医学」という新たな考え方を提唱します。この言葉が初めて登場したのは、アメリカの雑誌「サイエンス」の誌上でした。