M委がつきとめた大きな事実

食事・栄養と病気の関連性という重要な部分

フンザにはガンも心臓病もないとパーシィ議員が発言

M委の調査が歴史的な調査になった理由は、同委の調査によって、食事や栄養のとり方と病気の関連が初めて公式の場で明らかにされたからです。そしてそれは当然のこととして食事内容や栄養のことが健康にとって最大の問題なのだ、ということを世間にも医学界にも知らしめるきっかけになりました。彪大なM委の調査内容の全てをこの一例だけを示してその一端だけでも覗いておいてください。そしてこの1例だけからでも読者は、同委の指摘がそのままわれわれにも当てはまるものだということが納得できるはずです。

ミスター栄養委員会パーシィ議員のつぎのような言葉が同委の議事録の中にあります。同議員はM 委の調査の10年も前から世界三大長寿地域の1つフンザを訪れていました。そんな体験を踏まえての発言です。

「フンザにはガンも心臓病もありません。それなのに先進各国はこういう病人でいっぱいです。われわれの文明の中には何かが起こっているのです。そしてとくに、それも20世紀に入ってから、その何かが急激に強まっています。なぜならばガンも心臓病もその他の病気も今世紀初め頃のアメリカでは珍しい病気でした。それなのに今ではこういう病気の急増によって世界一豊かなわが国さえ財政的にパンクしかかっているのです。」

この「何か」を説明する前に、同議員が委員会で同僚議員たちにいった言葉をもう1つ紹介しましょう。

「私は10年前にフンザを訪ねてから食生活をアメリカ的でないものに変えました。以来健康そのものだし体重だってこのとおりで肥満などとは縁がありません。諸君も見習ったらどうだ」ガンも心臓病もないフンザとアメリカのような先進国では他の条件も違うと反論する読者もいるかもしれません。しかしいまの2つの発言からだけでも食生活の重要さははっきりわかるでしょう。なぜならば食生活をアメリカ的でなくフンザ型にしたパーシィ議員は、同じアメリカに住みながら健康そのものだというからです。

現代病の増加は食生活の「欧米化」が原因だった

同議員の言葉のうちつぎの言葉はもっと重大です。つまり、「20世紀初頭には同じアメリカでもガンや心臓病は珍しい病気だった」というものです。

M委の審議時点でアメリカの心臓病死は全死因中の40% 弱で死因のトップだったし、現在だってほとんど変わっていないのです。これに対し20世紀初頭には、心臓病死は全死因中のわずか8% でした。確かに珍しい病気だったのです。ガンに至っては、肺ガンなど幾つかのガンはこの間に数10倍にも増えているほどです。

ではこの背後に何があったのでしょうか?これをマタガバン委員長は「食事改善目標」を発表するに当たってアメリカ国民にこう言いました。「20世紀初頭に比べるとアメリカの食生活は悪い方向に変化したのです。これが全ての原因でした。しかもそれに誰も気づかなかったのです」

要するにパーシィ議員のいった「何か」とは、食生活がガン、心臓病、脳卒中、糖尿病など成人病といわれる病気を起こす方向に悪化したということです。

しかし、要するに1970年代(現在も大差はない)の食事は、健康のためには当時から7~80っていたということです。そしてこういう食事がどのようにしていろいろな病気を起こす原因になっているかを、M委は彪大かつ詳細な資料と多くの専門家を呼んでの審議調査によって明らかにしたのです。

悪化した食習慣の元凶は、食生活の欧米化といわれる変化にほかなりません。つまりアメリカの食事も昔は今ほど欧米的な食事ではなかったのです。しかし、それが「欧米風」になって今のようになったということです。この間に植物食品からのでんぶん質の摂取が25% 減り、その分脂肪が増えたことを示していて、食事の「欧米化」を証明しています。蛋白質全体の比率は変わっていないのですが、実は植物性の蛋白質は減り、動物性のそれはこの間に2倍以上に増えたです。。つまり動物性食品型の食生活に変わったのです。一言でいえば農民型の食事から現代の都会人周の食事に変わったと解釈すればわかりやすいでしょう。余談だがつい先日、私は来日中のアメリカの健康問題のプロと会った。彼はフンザを何度も訪ねていてこんなことをいいました。

「フンザでは肉を1年に1度ぐらいしか食わない。ミスター今村、リトル・ミート、モア・ベジタブル(肉を少し、野菜を多く)だよ」

M委の指摘をわれわれが対岸の火事視できないのは誰にでも納得できるでしょう。アメリカで7~80年の間に起きた以上の変化(しかも同じ悪い変変化)が日本では最近の2~30年という短期間に起き、同じようにガン、心臓病その他の病気が急増しているからです。

M委が提案した食事改善目標の内容は詳しくは後ほど紹介しますが、一言でいえば、それはアメリカ国民に20世紀初め頃の食事にもどれと訴えたものでした。なぜならその頃は「ガンも心臓病も珍しかった」(パーシィ議員)からです。これは日本でいえば昭和30年代初め頃の食事にもどれということになります。

成人病が近頃は「生活習慣病」と呼ばれるようになりました。子どもにも病気が起き成人病という名前が相応しくなくなったからです。しかし、本サイトでは引き続き成人病と表記します。

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