妊娠を維持できない食事

平均的な成人の体内に存在している鉄の量は3.5~4.5グラムにすぎない。小さじ10分の1の量です。そのわずかな量の鉄が20兆にものぼる赤血球のヘモグロビンを構成していて、毎分1億一500万個のヘモグロビンが新しくつくられています。

ヘモグロビンによって全身の細胞に酸素が送られるのですが、体がその酸素を使うのにも鉄をふくんだ酵素の働きが必要となります。重量にすればごく少量の鉄がそういう生命活動の根元を支えているのですが、活動をしているのは体内の鉄の75% で、残りの25% は肝臓と脾臓と骨髄のなかにフェリチン(鉄蛋白質)とへモシデリン(血鉄素)のかたちで保存されています。

体は一度とりこんだ鉄は、できるだけ体外に出さないようにしていて、リサイクルさせて使っています。鉄が体から失われるのは排泄によってではなく、皮膚の表面の細胞の欠損と呼吸によってです。

むろん妊娠中には、体内に貯蔵されている鉄の一部は胎児のなかに移されます。その移動と保存を考えると、われわれの体内の鉄の原子のいくつかは、何世代にわたって先祖から受けつがれてきたもものかもしれません。

他のミネラルに対しては、体は吸収率を変えたり排泄量を調整したりして体内の量をコントロールしているのですが、鉄に関しては吸収だけでコントロールしています。尿から排泄されるのはきわめて微量です。便にふくまれている鉄は吸収されなかったものです。

胃腸が正常ならば、通常、食事でとられた鉄の6~10% が吸収されます。しかし、鉄が欠乏している状態では15% 以上にも吸収率が高まるし、鉄の欠乏による貧血が起こっている場合には50~60% にもなりうるのです。献血をしたようなときにも何日か吸収率が高まりますが、失われた鉄が元通りに補填されるまでには何ヶ月もかかってしまいます。それくらい埋めあわせるのは容易でないのです。

だから、十分に鉄をとっていない人は、毎月の生理によって不足気味になります。妊娠中は血液の量が増えるうえに、胎児と胎盤にもとられるので鉄の必要量が増大するのですが、アメリカの政府は現実問題として、大多数の女性はそれだけの量を体内にたくわえてもいません。習慣的なアメリカ人の食事ではとることも困難です。それで、1日に30~60ミリグラムの鉄をサプリメントでとるように勧告しているわけです。

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授乳婦も、妊娠中のたくわえの激減と、出産時の出血による損失を補うためにサプリメントでとることが望ましいのです。

つまり、平均的なアメリカ人の食事はすでに、鉄に関していえば、妊娠を維持できるものではなくなっているということです。普通の食事をしていたのでは確実に欠乏することを調査、分析の結果として政府が認めているのですが、ではわが国の食事はどうかというと、そこまで徹底的な食事の分析がなされていないのでな評価もできないのが事実です。おそらく事態はアメリカとあまり変わりはないでしょう。

以下の鉄を多くふくんでいる食品表をみると、海藻を除いてそれらの食品を日本人のほうがはるかに多くとっているとは思えません。

毎日の食事で鉄を十分にとるようにするには、豆料理を欠かすことができません。それと緑色野菜と精製していない穀類を食事の核にして、間食にドライ・フルーツやナッツ類をとるのがポイントです。

ドライフルーツやナッツは便秘改善にもおすすめですので普段から食べるといいでしょう。

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鉄には大きく分けてヘム鉄とノンヘム鉄の2種類があるのですが、動物性食品にしかふくまれていないヘム鉄は植物性食品のノンヘム鉄よりも吸収されやすい特徴があります。そして、ヘム鉄がノンヘム鉄と一緒に摂取された場合には、ノンヘム鉄の吸収を助ける。たとえば100グラムの牛肉を野菜料理に加えただけで、食事全体のノンヘム鉄の吸収が十倍もよくなります。その効果は牛肉に限らないので、鉄を多くふくんだレバー、魚貝類、ターキー、鶏肉などを、量はわずかでよいから食べ合わせることが望ましいということです。

ビタミンC もまたノンヘム鉄の吸収を高めます。朝食にオレンジ・ジュースを1杯加えただけで吸収される鉄の量は2倍になり、デザートにとる1個のパパイヤが鉄の吸収率を50% も高めてくれます。。ピーマンやブロッコリーなどのビタミンCを多くふくんだ野菜が、つねに食事にふくまれていることが大事なのです。

食事と一緒にとらないと効果はないのだが、ビタミンCを多くとればとるほど吸収率は高まります。鉄が欠乏している人の場合ビタミンCを25ミリグラムとると50% 高まり、1000ミリグラムとると1000% 高まるのです。つまり10倍の鉄が吸収されるのです。逆に吸収を悪くさせるのは紅茶で、赤ワインやコーヒーもよくありません。食事のときに飲むとよいのは白ワインとオレンジ・ジュースな。白ワインはわずかに、オレンジ・ジュースはかなり鉄の吸収を助けてくれます。

鉄のサプリメントは便秘を招きやすいので、一緒にドライ・フルーツやプルーンジュースをとるといいでしょう。それで便秘が防げると同時に鉄も足すことができるということです。

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鉄を豊富に含んでいる食品

  • 海藻
  • レバー
  • ビール酵母
  • ひまわりの種・かぼちゃの種
  • 魚卵
  • ドライフルーツ

食材のパワー

知って得する知識

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